パートや契約社員を正社員にしたら助成金が出る——建設業でキャリアアップ助成金を使う前に知っておくこと
2026/4/5
パートや契約社員を正社員に転換すると、1人あたり最大80万円の助成金が出ます。
これがキャリアアップ助成金の「正社員化コース」です。
建設業でも使えますし、実際に使っている会社は増えています。
ただし、申請前に準備しておかないといけないことが複数あって、転換してから慌てて書類を揃えようとしても間に合わないケースが出てきます。
そもそもどんな制度なのか
キャリアアップ助成金は、厚生労働省が所管する雇用関係助成金のひとつです(厚生労働省公式サイト)。
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の方のキャリアアップを支援する事業主に対して支給されます。
コースが複数あるなかで、建設会社が使いやすいのは「正社員化コース」と「賃金規定等改定コース」の2つです。
正社員化コースは、有期雇用から無期雇用・正社員への転換に対して支給されます。
中小企業の場合、有期→正規の転換で1人あたり80万円(2024年度時点。
変更の可能性あり)が支給される設計になっています。
賃金規定等改定コースは、全労働者の賃金規定を改定して実際に賃金を上げた場合に支給されます。
こちらは転換ではなく「賃上げ」に対する助成です。
現場の職人さんを正社員にしながら同時に賃金規定も整備するという流れで、両方のコースを組み合わせて申請している会社もあります。
ただし、コースごとに要件が異なりますから、混同しないように整理しておく必要があります。
建設業が気をつけるべき対象要件
この助成金を受けるには、まず会社が「キャリアアップ計画」を作って労働局に届け出ておかなければなりません。
これが実務上の最大のつまずきポイントです。
正社員に転換する前に計画を提出していないと、原則として申請できません。
現場監督のパートさんを来月から正社員にしようと決めた翌日に書類を出しても遅いのです。
対象となる労働者の要件としては、転換前に同じ会社で有期雇用契約を6か月以上継続している必要があります。
建設業では、繁忙期だけ雇う形で6か月未満で契約が途切れているケースがよくあります。
そのパターンだと対象外になりますから、雇用形態と契約期間を今一度確認してみてください。
また、転換後に正社員として継続して雇用し、かつ転換後6か月間の賃金が転換前より3%以上増額されていることも求められています。
事業主側の要件としては、雇用保険適用事業所であることが前提です。
さらに、転換する制度を就業規則または労働協約に明示しておく必要があります。
「転換制度は口約束で決めていた」という会社は少なくありませんが、それでは要件を満たしません。
就業規則への記載が確認されます。
具体的にどんな会社が使えるのか
たとえば、従業員15人の内装工事会社で、現場作業員として3年間有期契約を更新してきたAさんを正社員にするケースを考えてみましょう。
この場合、6か月以上の有期雇用という要件は満たしています。
キャリアアップ計画を転換の1か月前に提出し、就業規則に正社員転換制度を明記して、転換後の月給を転換前より3%引き上げれば、正社員化コースの対象になり得ます。
申請から支給まで数か月かかりますが、80万円が入ってくるインパクトは小さくありません。
年商2億の塗装業の場合で、派遣社員として働いていたBさんを直接雇用の正社員にするケースはどうでしょうか。
派遣から正規転換も対象になります。
ただし、この場合は派遣会社との契約内容や、転換のタイミングに関するルールが別途あります。
派遣元と派遣先双方の書類が必要になりますから、手続きの手間は有期雇用からの転換より増えます。
実務では「派遣会社に確認を取るのに時間がかかって、申請期限ギリギリになった」という話をよく聞きます。
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無料で登録する →申請の流れ
まず、キャリアアップ計画書を作成して、管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出します。
計画の認定が下りたら、そこから対象者の転換手続きを進めます。
転換後6か月間の賃金を支払い終えた後、支給申請書を提出する流れになります。
支給申請の期限は、転換後6か月の賃金支払い日の翌日から起算して2か月以内です。
この期限を過ぎると申請そのものができなくなりますから、賃金台帳や出勤簿、労働契約書などは転換時点から整理して保管しておいてください。
実務では、転換から申請まで9か月前後かかるのが一般的なスケジュール感です。
支給決定が出るまでさらに数か月かかるケースもありますから、資金繰りの当てにするなら早めに動き出す必要があります。
よくある失敗パターン
20年現場を見てきて一番多い失敗は、「転換してから計画を出した」というものです。
順序が逆になってしまうと、いくら書類を整えても原則対象外です。
次に多いのが、賃金3%増の確認ミスです。
基本給だけ見て「上がっている」と思っていたら、各種手当を合わせた比較では要件を満たしていなかった、というケースがあります。
転換前後の賃金比較は、基本給だけでなく諸手当を含む総支給額で確認してください。
また、就業規則の変更が転換日より後になってしまうパターンも出てきます。
「就業規則は変えたが届け出がまだだった」という状態でも要件を満たさないと判断されることがありますから、所轄の労働基準監督署への届け出まで転換前に完了させておく必要があります。
Q&A
Q. 一人親方に近い形で働いている現場作業員も対象になりますか?
一人親方は雇用関係がありませんから、キャリアアップ助成金の対象外です。
雇用保険に加入している有期雇用の従業員が対象です。
一人親方を自社で雇用した場合、雇用後に有期契約として6か月以上経過してから正社員転換する流れを踏めば対象になる可能性があります。
ただし、雇用実態を正確に整理する必要がありますので、ハローワークか社労士に確認してみてください。
Q. 助成金の金額は毎年変わりますか?
変わります。
年度ごとに見直しが行われますから、申請前に必ず厚生労働省の公式サイトで最新のコース別助成額を確認してください。
過去には額が引き下げられたこともあります。
本記事内の金額はあくまで参考値として示しており、申請時点の公式情報を優先してください。
Q. 複数人を同時に転換した場合、まとめて申請できますか?
同じ申請期間内に転換した複数の対象者をまとめて申請することは可能です。
ただし、対象者ごとに書類を揃える必要がありますから、人数が増えるほど書類量も増えます。
5人以上を一度に転換するなら、早めに書類の準備を始めないと申請期限に間に合わなくなる可能性があります。
Q. 転換後に本人が自己都合退職した場合はどうなりますか?
支給申請の時点では雇用が継続している必要があります。
転換後6か月の賃金支払い前に退職した場合は、対象外となります。
また、支給決定後に退職した場合は返還を求められるケースもゼロではありませんから、転換のタイミングと本人の意思確認は丁寧にしておくべきです。
この記事は情報提供を目的としており、申請の代行や法的助言を行うものではありません。
最新の情報は各行政機関の公式サイトでご確認ください。